銀行窓口や、銀行から電話で投資を勧誘されたことはありますか。銀行員から勧められるとおりに投資をしてはいけない!と本当に思っています。なぜそう考えるのか、銀行員から投資を勧められた場合に注意してほしいことをお伝えします。
どんな人に勧誘の電話がかかってくるのか
まず、銀行が電話勧誘する際には、ターゲットとする客層があります。これは銀行セールスの内部情報になるので、具体的な客層をズバリ申し上げることはできません。
あくまで一般論ですが、勧誘されて投資をする可能性のある、資金に余裕がある人なら見込み先となり得ます。例えば預金残高が1千万円以上あるとか、その残高が1年以上キープされている人などが考えられます。
あなた自身が電話勧誘を受けたのであれば、「あなたのような人が銀行のターゲット」ともいえるでしょう。
銀行員は自分の都合で金融商品を選別して売りつけてくる
銀行員が投資を勧める場合には、売りたい商品の優先順位があります。それは、収益の高いものです。残念ながら顧客にこの商品が必要かどうかは二の次です。
なぜ銀行は投資を売らなければいけないのでしょうか。銀行は、本来預金を預かり、そのお金を融資して預金金利より高い利息をもらい、預金利子を付けて満期で返します。このとき、預金と融資の利息の差額がいわゆる利ざやであり、従来の銀行はこの利鞘で利益を得てきました。
しかし、自由化や低金利の影響で、こうした本業の預貸金利ざやで儲からなりました。別の売上を作る必要があり、手数料で利益を得ようと投資商品の販売をするようになってきたのです。
銀行にとって儲かる商品とは?
では、銀行にとって「儲かる商品」とはどんなものなのでしょうか。商品別に説明します。
まずは個人年金(保険)です。知らない方も多いのですが、個人年金は生命保険会社の商品です。特徴は以下です。
1、銀行員が進めてくるものには、運用実績に応じて元本(元金)が変動するもの、つまり元本保証がない商品も多く含まれる
2、一般に、個人年金は10年以上の長期運用が多く、満期を把握していないと必要な時に使えないこともある
3、途中で償還されるなど、特別な条件がない限り、終身年金は原則として自分が死なないと戻ってこない、つまり自分自身は使えない商品設計になっている
次は投資信託です。投資信託は長期保有する人も多いのですが、それでは銀行は儲かりません。従って、顧客に定期的に連絡をします。表向きには「アフターフォローと」ということになりますが、実際はセールスが主な目的です。
アフターフォローとして、運用への不満を聞き出し、ほかの投信を紹介します。そこで再度手数料を得るのです。これらは俗に「コロガシ」と呼ばれています。コロガシとは転がしの隠語で、転がされているのはもちろん顧客です。(現在は規制も厳しく、短期間の乗り換え(つまりコロガシ)は原則禁止されています)
外貨預金にも注意
外貨預金で注意したいのは、見た目の高金利につられてはいけないという点です。たとえば「3ヵ月・5%」の金利でも、為替の変動で吹っ飛んでしまうからです。
また「仕組預金」といったものがあります。これは「ドルなどの外貨で預け入れて、預け入れた時より〇〇円まで円高になっていなければ、3ヵ月後の満期時に円の元本と円の利息を保証する。しかし〇〇円より円高が進んだ場合は円ではなく外貨で払いもどす」といった内容です。
これなども一見高金利を謳っていますが、いわゆる「タラレバ」であり、その思惑が外れると損失が大きいことは言うまでもありません。
なぜ銀行員はこれらの商品を売るのか
個人年金や投資信託を売ると、その販売額の何%という手数料を、個人年金なら生命保険会社、投資信託なら投信委託会社から得ることができます。言ってみれば、銀行はこれら販売会社の下請けのようなものです。
また、円貨より外貨、債権投資より株式投資、先進国国債より途上国国債への投資など、リスクの高い商品ほど、手数料率が高くなります。したがって、個人のノルマを抱えている銀行員は、手っ取り早く儲けられる道を選びます。つまり、手数料が高い=リスク度合いの高い商品を、売りやすい顧客に売りつける方向に進みがちなのです。
銀行員の本音とは
銀行員は、ノルマがあるから金融商品を提案して売りつけます。これはお客様本位の営業体制とは言えない姿勢です。自分自身では投資をしない人間も多いのです。さらに、顧客に売りつける投資商品を、自分も買ってみるという人はほとんどいません。もちろん、自分では購入できない場合もあります。
詐欺まがいの投資や運用を戒める記事で、「そんなに儲かるなら、営業マンはあなたに勧誘などせず自分で投資するはずですから、信じてはいけません」といった表現があります。これは銀行の投資勧誘でも、残念ながら当てはまる部分が多いです。
一つの金融商品を販売するのには、顧客への説明、契約、アフターフォローといったプロセスが必要ですが、これはリスク度の高低に関係なく一定です。つまりどんな商品(儲かるモノ、儲からないモノ)でも手間は一緒なのだから、だったら儲かる方が良いという考えになりがちです。つまり、銀行員は己のノルマを第一義に商品の説明をするとも言えます。
もちろん、実際の提案では顧客の意向を確認し、その人に適した金融商品を提案するなど、お客様本位の営業をしなければいけません。しかし、金融商品の勧誘に関するトラブルの根底には、行き過ぎたノルマがあることも否めません。
私の経験
私自身、終身年金保険や投資信託を顧客に売りつける専門業務に任命され、空しさに苛まされた時期がありました。その当時はノルマに追われ、それこそ顧客の顔など見ずに、売れる商品、儲かる商品を売りつけていました。
現実には目の前にお客様がいて面談しているわけですが、ノルマ第一に考える私にはお客様の顔は見えていなかったのです。
私の勤務する銀行では、ノルマが達成できなくても、いきなりクビになるようなことはありません。ただし、人事評定では容赦なく査定されます。ノルマを達成した人間が出世し、そうでない人間は出世が遅れたり、いわゆる左遷の憂き目に遭ったりしていました。
これは、銀行では当たり前のことです。どこの企業でも成果は求められるのは当然ですが、顧客第一とはならない現状に苦しさを感じていました。
勧誘されたらどうする?
銀行員の言うことなど一切聞かない、という選択肢もあります。しかし、銀行から勧誘を受けているあなたは銀行から選ばれた人ともいえます。
もし投資を考えているなら、とりあえず話だけでも聞いて見てはどうでしょうか。もちろん、銀行員に丸投げしたり、全幅の信頼を置いたりするのは危険です。しかし、この記事を読んだあなたなら、目の前にいる銀行員がどのような意図で勧誘しているか、考えながら冷静に受け止められるでしょう。
それでも、勧誘に押し切られそうになったり、このまま選択していいのか不安になったりしたら、銀行員にこう問いかけてください。
「そこまで強くすすめるなら、銀行員のあなたは投資しないのですか?」と。